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岡田武彦
岡田武彦先生の紹介

岡田武彦先生
隅博文氏 撮影

『わが半生・儒学者への道』
岡田武彦 口述
九州大学名誉教授:1908年~2004年、享年95歳 中国哲学者、陽明学者、儒学者、著作家。兵庫県白浜村字中村にて出生、旧制兵庫県立姫路中学校、旧制姫路高等学校文科を経て、九州帝国大学法文学部支那支哲学史専攻卒業。昭和33年九州大学教授、昭和35年文学博士、昭和41年米国コロンビア大学客員教授、昭和47年九州大学定年退官・中華学術院栄誉哲士、九州大学名誉教授。昭和56年叙勲三等授与旭日章、平成12年西日本文化賞(学術部門)受賞、平成16年10月福岡市の自宅にて逝去。享年95歳。
岡田武彦先生は王陽明の墓の復建に尽力をされた方で、世界的に王陽明研究の第一人者でした。朱子学は理学、陽明学は心学、岡田武彦先生は身学を提唱されました。岡田武彦先生は大学時代に楠本正継教授に師事されています。姫路藩の仁寿山校を設立された河合寸翁は崎門学派の儒学者でしたが、岡田武彦先生も崎門学派の儒学者です。福岡県朝倉市に岡田記念館(現在閉館中)があります。
岡田武彦先生の著書
世界の平和と幸福と繁栄は日本の簡素の精神と崇物論
岡田武彦先生の学問の究極の到達点は
『簡素の精神』と『崇物論―日本的思想』

『簡素の精神』 岡田武彦 著
致知出版社 発行 1998.8

『崇物論-日本的思考』岡田武彦 口述
森山文彦 編2003.8.24
岡田武彦先生の著作表紙・39巻(上記2冊を含み全集を除く)



1.『明代儒学者一覧付索引』岡田武彦、佐藤仁 著 九大文学部宋明思想研究室 昭和三二年(1957)三月
2.『朱子語類校勘記(一)A』岡田武彦 編纂 九大文学部宋明思想研究室 昭和三四年(1959)九月
3.『楠本端山-生涯と思想』岡田武彦 著 積文館 昭和三四年(1959)一〇月
4.『坐禅と靜坐』岡田武彦 著 昭和43年10月15日 東出版(株) 長崎県教育委員会 昭和四〇年(1965)九月 東出版 昭和四三年(1968)四月 (再版)大学教育社 昭和五二年(1977)六月
5『.明末儒教の動向』岡田武彦 著 九大宋明思想研究室 昭和三五年(1960)三月
6.『東洋の道』岡田武彦 著 明徳出版社 昭和四四年(1969)一〇月
7.『王陽明と明末の儒学』岡田武彦 著 明徳出版社 昭和四五年(1970)八月(中文訳『王陽明与明末儒学』呉光、銭明、屠承先 訳 上海古籍出版社平成一二年(2000))
8.『朱子語類付索引』岡田武彦 著 中文出版社昭和四五年(1970)八月
9.『王陽明文集』岡田武彦 著 (中国古典新書) 明徳出版社 昭和四五年(1970)一〇月
10.『中国と中国人』岡田武彦 著 啓学出版 昭和四八年(1973)八月
11.『続・東洋の道』岡田武彦 著 明徳出版社 昭和五一年(1976)三月
12.『宋明哲学の本質』岡田武彦 著 『宗明哲学序説』文言社 昭和五二年(1977)五月 (抄録版)『宋明芸術序説』昭和五二年(1977)一一月 (改訂版)『宋明哲 学の本質』昭和五九年(1984)一一月
13.『叢書・月田蒙斎・楠本端山』月田蒙斎・難波征男 著、楠本端山・岡田武彦 著 (叢書日本の思想家第42巻)明徳出版社昭和五三年(1978)一二月
14.『劉念台文集』岡田武彦 著 (中国古典新書)明徳出版社昭和五五年(1980)四月
15.『江戸期の儒学』岡田武彦 著 木耳社 昭和五七年ーー月
16.『中国思想における理想と現実』岡田武彦 著 木耳社 昭和五八年(1983)九月
17.『山崎闇斎』岡田武彦 著 (叢書日本の思想家第6巻)明徳出版社昭和六〇年(1985)一〇月
18.『安東省庵・貝原益軒』 菰口治 著/岡田武彦 著(安東省庵・ 菰口治 著/貝原益軒・ 岡田武彦 著 )叢書日本の思想家第9巻 明徳出版社 昭和六〇年(1985)一二月
19.『王陽明と現代(活学シリーズ3) 』 関西師友協会 昭和六二年(1987)
20.『近藤篤山・林良斎 (叢書・日本の思想家)』 近藤篤山・近藤則之 著 林良斎・岡田武彦 著 叢書日本の思想家第29巻 明徳出版社昭和六三年四月
21.『私と陽明学』岡田武彦 著 (郷研叢書第5集)日本郷学研修所昭和六三年ー ー月
22.『現代に生きる論語』岡田武彦・熊谷八州男 共著 文言社 昭和五四年(1979)一〇月
23.『王陽明(上)』岡田武彦 著 (シリーズ陽明学第2巻) 明徳出版社 平成元年(1989)五月
24.『王陽明(下)』岡田武彦 著 (シリーズ陽明学第3巻) 明徳出版社 平成三年(1991)五月
25.『わが半生・儒学者への道』岡田武彦 口述 思遠会 平成二年(1990)十一月
26.『現代の陽明学』岡田武彦 著 明徳出版社 平成四年(1992)十一月
27.『孫子新解』岡田武彦 著 明徳出版社 平成四年(1992)十一月
28.『儒教精神と現代』岡田武彦 著 明徳出版社 平成六年(1994)三月
29.『東洋のアイデンティティ-中国の思想家に学ぶ』岡田武彦 著 批評社 平成六年(1994)四月
30.『王陽明小伝』岡田武彦 著 明徳出版社 平成七年(1995)十二月
31.『王陽明紀行—王陽明の遺跡を訪ねて』岡田武彦 著 登龍館 平成九年(1997)八月
32.『簡素の精神』岡田武彦 著 致知出版社 平成十年(1998)八月
33.『警世の明文 王陽明拔本塞源論-王陽明の万物一体思想』岡田武彦 著 明徳出版社 平成十年(1998)九月
34.『簡素と和合-対立から大同の世紀へ』岡田武彦・張岱年 対談 (難波征男編)中国書店 平成十一年(1999)五月
35.『将来世代への立志の贈り物』岡田武彦 著 将来世代国際財団 平成十二年(2000)五月
36.『私家版・岡田武彦先生語録』岡田武彦顕彰会 森山文彦刊 平成十二年(2000)五月
37.『陽明学つれづれ草-岡田武彦の感涙語録』岡田武彦 著 明徳出版社 平成十三年(2001)四月
38.『ヒトは躾で人となる』岡田武彦 著 登龍館 平成十三年(2001)十二月
39.『崇物論-日本的思考』岡田武彦 述 森山文彦 編纂 自家版 平成十五年(2003)八月
岡田武彦全集・25巻

1.『王陽明大伝 -生涯と思想-(一)』
王陽明蘇る!
万感の思いで書き下した畢生の大作。
陽明の生き方・考え方を宋明儒学研究の第一人者が、多くの文献を駆使して掘り起こし、知行合一の哲学=陽明学の本質を平易に説いた混迷の時代の行動指針。
2.『王陽明大伝 -生涯と思想-(二)』
王陽明蘇る!
万感の思いで書き下した畢生の大作。
竜場の流謫地で自らの心の中にこそ天の理が存することを大悟した陽明が、知行合一の陽明学の一大教条を発表するまでの苦悩と葛藤を描いた著者渾身の力作。
3.『王陽明大伝 -生涯と思想-(三)』
王陽明蘇る!
万感の思いで書き下した畢生の大作。
山野に遊ぶ時も、賊徒の討伐に身を削る間も、弟子たち一人一人への適切な指導と、大衆の教化を怠らず、自ら事上磨練を示した教育者王陽明の真骨頂を活写。
4.『王陽明大伝 -生涯と思想-(四)』
王陽明蘇る!
万感の思いで書き下した畢生の大作。
寧王宸濠の乱に対する周到な計画と作戦、事後処理の苦悩、陣中でも続ける講学と親の死に目にも逢えぬ望郷の念・・・、事上磨練を重ねる陽明の息遣いを見事に描く。
5.『王陽明大伝 ¬-生涯と思想-(五)』
王陽明蘇る!
万感の思いで書き下した畢生の大作。
始めて致良知を高唱した五十歳から、乱賊平定後、病に倒れ波乱の生涯を閉じるまでの陽明晩年の生涯と思想を描く「大伝」完結編。「王陽明抜本宣言論」他を併録。
6.『王陽明全集抄評釈(上)』
陽明学の精神
原典を通して陽明思想の根幹を詳説。
陽明の全集から、現代人の活学の指針となる格好の文を精選・解説した評釈三部作を上下二巻に収録。上巻は「王陽明文集」全篇、「王陽明」上の第十四章まで収録。
7.『王陽明全集抄評釈(下)』
陽明学の精神
原典を通して陽明思想の根幹を詳説。
著者の陽明評釈三部作のうち「王陽明」上の第十五章から終章まで、また特に『伝習録』より必読の文を選出しテーマ別に構成・解説した「王陽明」下を前篇収録。
8.『王陽明紀行(上)』
王陽明遺跡探訪
波乱万丈の足跡をたどる貴重な記録。
中国の学者とも共同で、数次にわたって中国全土に散財する陽明の遺跡を調査した時の旅行記を上下二巻に収録。その足跡は、中国の学者でも未踏の所が多い。
9.『王陽明紀行(下)』
王陽明遺跡探訪
波乱万丈の足跡をたどる貴重な記録。
「王陽明紀行」の後半に加え、王陽明の生涯と思想を年代を追って平明に描いた「王陽明小伝」を収録する。さらに付録として、年譜、関係論文など三篇を併載する。
10.『王陽明と明末の儒学(上)』
渾身の代表作
明末儒学研究に先鞭をつけた名著
王陽明・湛甘泉とその流れをくむ人々の思想を、それら思想家達と同じ心になり、共に悩み疑い究明した過程をそのままに執筆した著者の学位論文をまとめた代表作。
11.『王陽明と明末の儒学(下)』
渾身の代表作
明末儒学研究に先鞭をつけた名著。
初版刊行以来三十余年を経た今日でも、本書の学問的評価は不動のものがあるばかりか、明末社会の風潮に類似する現代のわが国を考える上でも恰好の資料。索引付。
12.『孫子新解』
必勝の哲学!
不戦屈敵の孫子兵法の極意に学ぶ
山口春水の「孫子考」の説を踏まえ、現代人のために孫子兵法の原理と精神を詳説し、現実主義に立脚し権謀術数の渦巻く社会を生きる知恵を与える日本人の必読書。
13.『劉念台文集』
誠意の哲学!
忘れられた明末の大樹を再評価。
明朝滅亡に際して壮烈な節義を持して国土に殉じ、わが幕末期にも大きな影響を与えた劉念台の生涯と思想を解説した名著に、関連の論文四篇を付録した決定版。
14.『東洋の道』
東洋人の英知
時代を開く東洋のこころと生き方。
中国古典から興味深い話を取り上げて、東洋人の生き方を実現主義・超越主義・理想主義の三方面から平易に説き、読者を魅了した好評の書を正・続併わせ収めた完本。
15.『東洋のアイデンティティ』
中国古代の英知
孔子と諸子百家の思想に学ぶ人生観。
中国古代の思想家の思想をわかりやすく紹介した「東洋のアイデンティティ」、論語の重要な章を解説した「現代に生きる論語」の二篇に、孔子関係の小文四点を収録。
16.『朱子の伝記と学問』
朱子学の世界
孔孟の学を蘇生させた宋学の集大成
中国哲学の主流として、後世に絶大な影響を与えた朱子学。その成立から発展に至るまでの学統や思想の特色を、多角的に説く論文十四篇を収めた朱子学理解の必読書。
17.『宋明哲学の本質(上)』
儒学思想再生
新精神文化の形成過程とその本質。
宋明哲学の成立から発展に至る具体的な様相、思想の内容を、陶磁・書画の特質など広く当時の学問芸術の背景を踏まえて興味深く詳述した書。参考図版も多数収録。
18.『宋明哲学の本質(下)』
儒学思想再生
岡田陽明学の根底となる貴重な業績。
著者の四十代後半から五十代に執筆された、宋明哲学関係の論文十二篇を集成。名著『王陽明と明末の儒学』に継承・発展することとなる。濃密な岡田儒学の結晶。
19.『中国思想の理想と現実』
中国思想の課題
中国思想の根本問題と現代的意義
理想主義・超越主義・現代主義の三つに中国思想を大別し、それぞれの特色を明快に説き、またそれをどう現代に活かすか切論した九篇の論文を収載する。
20.『中国と中国人』
中国の実体
中国人の特質と現実社会の在り方
常に同時代の中国問題にも深い関心を懐いた著者が毛沢東とその思想、時代を中心に述べた現代中国論。「毛沢東試論」「中国人とその思想」の二篇を併載。
21.『江戸期の儒学』
幕末儒学の諸相
朱王学の日本的展開と近代への影響
江戸期全般の儒学を視野に入れつつ、 主に明清交替の動乱期の儒学思想を受用し切実な体認の学を深め、 朱王学の独自の展開を成し遂げた、 幕末期の醇儒達の学問を中心に解説した諸論文を収録。
22.『山崎闇斎と李退渓』
朱子学蘇る!
敬義・存養の日本的朱子学の確立。
門弟六千といわれ神儒を兼学し、後世大きな影響を与えた崎門学の祖・山崎闇斎の学問の特質を究明。彼が尊信した朝鮮の儒者李退渓に関する論文も付録。
23.『貝原益軒』
実学の精神
朱子学精神の日本的な継承と発展。
当代随一の博学を誇り儒学はもとより、医学を始め実学に画期的業績を残し、シーボルトを絶賛させた大儒益軒の生涯と学問の全容。
関係論文七編を併催。
24.『林良斎と池田草庵』
主静体認の学
過激な師と異なり虚心に学を求めた醇儒
朱子学一辺倒の藩風の中、体認を主とする陽明学を唱えた良斎は、朱王両学を究める草庵と初めて会い千古の心友と激賞・敬慕された。両儒の生涯と思想。
25.『楠本端山』
「全集」完結
楠本家所蔵の貴重な資料を駆使して、また朱子学・陽明学への深い理解をもってその思想を解明し、端山の生涯と思想を一体として書いた渾身の書。著者自身の追加補足原稿を加え、さらに読者の便宜をはかり編者によって原漢文には訓読文、難語に注を付す等、面目を一新し、六十五年ぶりに復刊。

岡田武彦先生の市民教育・書院教育


人間の本性
『崇物論-日本的思考』岡田武彦 口述より要約
崇物の物は万物を意味し、万物の中には人間も含まれます。人間と他の物とは、もちろん同気ですが、人間は他の物とは違って特別に霊妙な気の働きを持つ生物といってよいでしょう。人間は他の物とは異なる超絶的に優れた特性の持ち主です。
人類が類人猿と異なる点を挙げると従来は
① 知恵のあるヒト(Homo sapiens)
② 工作するヒトとなりますが(Homo faber)
最近では
③ 分かち合うヒトであることが分かりました。(Homo communicans)
今後は③に注意を払って哲学的研究をしなければなりません。
儒教は、人倫道徳を根本とする修己治人を説いています。「分かち合うヒト」すなわち社会生活ができるのは、人間が本来、わがことばかりでなく常に他人のことを思いやる心があるからです。すなわち、人倫道徳性を持つからであり、これを人間の本性として述べたのが儒者です。
儒教は人倫道徳を根本とする修己治人を説いています。その修己治人を明らかにしたのが『大学』で、正心、誠意、致知、格物、修身、斉家、治国、平天下の八条目の教えになります。
しかし、人間の特異性は人倫道徳的本性ばかりではありません。このことは、中国の古代思想とその歴史を見るならば容易に知ることができます。
人間の特性を中国の古代思想とその歴史から見ると下記の様な分類となります。これらは、いずれも根深い人間性の表現であるといわなければなりません。
①現実主義―功利的人間観に基づく。
人間は先ず己れの利を求める功利的な存在です。そこで現実主義の観方をする思想家は、人間の功利主義が如何に根強く切実なものであるかを洞察し、それに対処する道を説きました。孫子などの兵法家、韓非子などの法家、縦横家(外交家)がそれになります。
② 超越主義―宗教的人間観に基づく。
人間は本来宗教性を持っているという宗教的人間観に基づく超越主義思想も現れました。すなわち、人間は相対的な存在であって様々な矛盾・葛藤・苦悩から逃れ得ない運命を背負っており、人間以上の超越的なものへの随順によってのみ運命の束縛から離脱し安楽な絶対界に安住することができるとして、一切の人為を否定し天の無為自然に因循することを求めました。老子、荘子などの道家、中国化された仏教がそれになります。
③ 理想主義―道義的人間観に基づく。
一方、現実の人間は確かに功利的で人と人との共同生活には様々な矛盾・葛藤などを伴うけれども、人間は本来道徳的であり、お互いに情義(人情と義理)によって結ばれていると道義的人間観に基づく理想主義思想が生まれました。孔子、孟子、朱子、王陽明などの儒家がそれになります。
④ 芸術主義―審美的人間観に基づく。

写真で見る日本の宗教「崇物、神道、儒教、仏教とは」
◆崇物は物そのもの、物の霊を崇拝・崇敬するものですから宗教的・情緒的です。
◆神道はこの世の明るい現実的な道を説く(明るい生の世界を説く)
◆儒教は人倫を重んじ、現実の人間生活の道を説く
儒教は日本人の民族性と適合するところが多い。
◆仏教は超越的な道を説く(暗い死の世界を説く)

『崇物論-日本的思考』岡田武彦 口述 より要約したものを写真で表現
岡田武彦先生の『崇物論』と河合寸翁の心
西洋思想と東洋思想の違いは一言でいうと、「と」と「も」の違いです。西洋思想の「あなたと私」は、あなたと私は異なる線引きの世界です。東洋思想の「あなたも私も」はあなたと私は共にある世界です。西洋の世界は個の世界ですから、契約を重視します。東洋世界は共同体で生きる思想が重視されます。あなたと私は共に生きていこうという精神ですね。
岡田武彦先生は晩年『崇物論(すうぶつろん)』を発表されました。先生は「人や物を崇敬せよ」と呼びかけられています。「敬虔の心こそが万物を一体とする」と。人と共に悲しみ、人と共に喜ぶ。そして自然と共に生きる。『共に生きる』ことです。河合寸翁は江戸末期の賢人ですが、彼も同じ考え方をもって、藩政改革と財政再建に取り組んだのではないかと思います。未来を生きる我々は、この『共に生きる』心を持って、且つ王陽明の『良知』を実践することが肝要かと思います。混沌とした功利主義の現代を救えるのはこのキーワードしかないと思います。
朱子学の理学、陽明学の心学、岡田武彦先生は身学を提起されました。静座は心の敬を求める法、兀坐(こつざ)は身の敬を求める法です。兀坐とは、背筋を伸ばし、腰骨を立てて、目をつぶり、身体を静かに、ただじっと坐ることです。椅子に座ってもよし、床に座ってもよいようです。身体が静を知っている、兀坐だそうです。ユーチューブに岡田武彦先生の講義が残っていますが、勉強会の冒頭に10分程度兀坐をされています。現代人は忙しすぎる、動を働かすには静の兀坐を生活に入れることが大事といわれています。自然体の兀坐です。先生は『身学説』として
「人間の心の精妙な働きが身体、特に脳の生理的作用による、故に、身は宇宙の根源であり、兀坐して以てその根をを培養することが初学の道である。」と説かれています。皆さんも兀坐を生活に取り入れてみてください。
※座禅:仏教的(超越主義)な世界観、人生観から生まれた心の学。
※静座:儒教的(理想主義)な人生観から生まれた心の学。座禅を超えて出てきた修行法。
※兀坐:静坐を超克して出てきたもの。身の学。
◆参考文献・資料
※崇物論-日本的思考-岡田武彦 平成15年8月24日
※参考文献『李退溪によって結ばれた岡田武彦と金景煕会長の友誼』
福岡女学院大学人文学部 教授 難波征男
※参考HP:貝原益軒「養生訓」貝原益軒文化講座 平成14年 岡田武彦講師(93歳)
松尾允之著
貝原益軒博物館は福岡の久山町のホテルの中にあるそうです。

岡田武彦先生に頂いた「兀坐培根」
YouTube Yokeian Koga様から掲載

田武彦先生追想録
①崇物の道 ②岡田武彦先生の人と学問
(映像制作者:京都フォーラム 矢崎勝彦氏)
